生まれる前に治療する。

来間 一郎(2009年度機械B進学・土肥・正宗研究室所属 修士課程 1年)
ひとこと

進路選択に迷ったら、友達を誘って研究室を見に行くのもいいかもしれません。イベントが開かれていることもありますし、事前に連絡すれば個人的に見学することもできます。

低侵襲治療のための装置開発

 集束超音波による治療機器を支持して動かすためのデバイスを開発しています。集束超音波は、焦点だけにエネルギーを集中させ体外からでも治療を行える技術で,母親のおなかの中の赤ちゃんを治療する治療法として注目されています.しかし,おなかの中の赤ちゃんの治療においては、患部が小さい、赤ちゃんが動くといった理由から、適切に焦点位置を定めることが難しいといった問題点があります。これを解決するためには、診断機器で患部の位置を特定し、そこへ集束超音波の焦点を移動させるということをリアルタイムで行う必要があり、この移動の部分を担うデバイスとして、3自由度を持つ位置決め装置を設計しました。
近年では超音波を使った診断技術などの発達により、胎児期にも病気を発見することができるようになっており、早期治療によって胎児の将来のQOLを高めることが期待されています。開腹手術では母体・胎児ともにリスクが大きいため、このような体外からでも治療が可能な侵襲性の低い治療技術が重要になります。

初めての作品。

医療の現場に近い研究室

 私の所属する研究室の特色としては、ニーズ主導で、実用に重点を置いていることが挙げられます。医療現場で生じる様々な要求の中には、医師の身体ひとつでは実現できないものが多くあり、それらを補うため、工学的なアプローチからデバイスやソフトウェアを提案しています。目的が明確であり、命に関わるような切実に必要とされているものを扱うため、大きなやりがいを感じられます。
また、デバイスの開発では、設計から加工、電気系統まわりの製作、プログラミングなどをひととおり経験できるので、勉強になりますし、何より面白いです。最初から最後まで試行錯誤しながら作り上げた自分の作品だという意識があるので、完成して初めて動かしてみた時は嬉しくなりました。


先輩がきのこを育てていて、収穫すると食べさせてくれます。

様々な知識を得られる機械B

 機械Bでは、力学などのいわゆる機械系の科目を始めとして、電子回路、プログラミング、更には脳や知能の仕組みなどといった生物・心理寄りの分野まで、幅広く触れることができます。この幅の広さは、作れるものの多様さや、発想の柔軟さにつながってくると思います。実際にデバイスを作ってみる中で、色々な知識が必要だと実感しましたし、意外な場面で習ったことが役に立つこともよくありました。